早朝。

早朝の渋谷は悲惨だった。エレベーターから降りると頭を抱えてふらつくキャバ嬢が乗ってくる。道を歩くと道端で若い男が不思議な体勢で意識を失っている。どこの世紀末だよ。世界に名だたる大都市東京も、土曜の早朝は悲惨だった。それを尻目に俺は朝からトンカツをたらふく食い、そして道玄坂サンマルクでコーヒーを飲んでいるところだ。いい席だと思ったら、冷房が直撃して寒い。もうしばらく時間を潰したかったのにこれじゃさすがにしんどいか。席を動こうかと悩んでいる。でも隣の人が筆ペンで絵を描いているのが気になって動けないのだった。可愛らしいうさぎさんの絵だ。文化的な朝だなあ。そして店員さんが元カノそっくりだ。可愛い。あの頃のあいつを都会的にしたらあんな感じになったんだろうか。あまり見すぎても気味が悪いので控えつつ、俺は原稿を書こう。何かが生まれそうな空間だ。
……その前に、もう一杯、コーヒーをいただこうか。