初夏の夜に流れる川の静けさ

もう五月も終わろうという曇り空の夜だ。何を思ったのか分からないが、僕は河原町を歩いていた。あらゆるものがやけに眩しく感じられることに気付いた僕は、歩いているだけで頭を抱えたくなってしまったのだ。何かに集中しよう。そうしてゲームセンターの音楽ゲームコーナーへと足を運んだ。そのけたたましいまでの雑音がどうにも心地よく感じられたのは、無駄な思考を追い出してくれたからだろうか。

しばらくして、ゲームセンターを後にした。はじめはしっかりと踏み出せていた足も徐々にそのスピードを緩め、しまいには止まってしまった。夜を仰いで立ち尽くす僕にそれでも微笑みかけてくれたのは、君の送るメッセージだった。再び歩き出した僕は、川原のベンチへと向かった。なぜそこを目指したのかは分からない。でもそこに腰を下ろして顔を上げた途端に涙がこぼれてきた。きっと泣きたかったのだろう。自分の好きな景色を見たかったのだ。初夏の夜、静かな川辺、遠くの灯、曇った夜空、その景色のすべてが、僕の心に鮮やかな色をさしてくれた。

心が震えて泣いてしまったのは、きっと君のせいだ。